5月*馬場佑介『馬場佑介のジブリ学』
初回の5月。主宰・馬場佑介が大好きなジブリ映画について、制作秘話に注目しながら紹介しまうま。

馬場の好きなジブリ作品ベスト3
第1位「もののけ姫」
ジブリが世間的に広く知られるようになった一作。当時の日本の歴代興行収入1位、その他輝かしい賞を総なめにしました。室町時代の中頃という珍しい時代設定であり、自然VS文明、複雑な人物相関関係、単純な善悪二元論ではない構造など、ちゃんと理解するのはなかなか骨が折れる作品です。この作品以前と以後では監督の作風がガラリと変わるので、ある意味集大成的作品とも言えます。ちなみにキャラクターの一人であるエボシ御前にはこんな裏設定があるとかないとか。
「辛苦の過去から抜け出してきた女性。海外に売られ倭寇の頭目の妻となる。そこで頭角を現していき、ついには頭目を殺して金品を持って故郷に帰ってきた。このとき海外(明)で最新型の武器「石火矢」を手に入れ、日本に持ち込んでいる。
第2位「ハウルの動く城」
この作品は意外にも賛否が分かれるようです。ただ、自分が猛プッシュしたいのが、『実はソフィーが生命を吹き込む魔法が使える魔女』であるという隠された設定を皆さんはご存知でしょうか?その設定が分かった上でもう一度鑑賞していただくと、見方が変わると思います。ソフィーがカルシファーを意のままに動かせる理由や終盤にソフィーがやたらと口づけをする理由もそれです。ハウルは演出も優れてるので、是非もう一度観直してみてください!
第3位「平成狸合戦ぽんぽこ」
まず注目すべきは高畑勲監督作品の中でも唯一の原作なしのオリジナル作品であること。内容は痛快なファンタジーでありながら、高畑監督の得意のリアリズムが遺憾なく発揮されており、自然を必要以上に美化しない、人間にも狸にも過度に
肩入れしないなど、高畑監督の強い意志を感じます。また、この作品をつくるにあたって狸に関する伝承や日本画を徹底的に取材し、作品に余す事なく反映させるなど監督の情熱も流石です。
また途中で他のジブリの作品のキャラクター等がこっそり出てくるのも隠れたみどころですね。
「ルパン三世 カリオストロの城」
まぁ、厳密に言うとジブリ作品ではないのですが、なんと言っても宮崎駿初監督作品なので許して欲しい。さて、この作品の見どころと言えば、なんと言ってもルパンシリーズ屈指の娯楽性の高さ! 制作期間4ヶ月半という短い時間で作ったとは思えないくらい色んな要素が詰め込まれています。ただ、今までのルパンと比べて「善人化」していることから原作者のモンキー・パンチさんは「これは僕のルパンじゃない「これは宮崎さんの作品としてとてもいい作品だ」と述べたのは有名な逸話。なので、「カリ城」のルパン像は、普段のルパンシリーズよりも年齢設定を高めにした、「人生経験を積んで少しマイルドになったおじさんルパン」なんだそう。だからヒロインのクラリスはルパンを「おじさま」と呼ぶんですね。
「風の谷のナウシカ」
実は宮崎さんの漫画版ナウシカが先にあって、それを映画化した作品。
でも、元々は原作なしのオリジナル作品だと映画の企画が通らないので、先に漫画原作を描こうということで漫画版ナウシカが生まれた。
ややこしい……。この作品も本当は「スタジオジブリ」が制作したものではないです。しかし、この作品から後々のジブリのプロデューサーとなる鈴木敏夫さんだったり、音楽の久石譲さんとタッグを組み始めます。余談ですが、ナウシカのスタッフの中には「エヴァ」や「シン・ゴジラ」の監督で知られる庵野秀明さんも居ます。宮崎監督はよく「庵野は人物ひどいね、人間描けないね」と言っていたそう。
しかし、庵野さんはメカやエフェクトを描くのは得意だそうで、主に巨神兵のシーンを任されていたそうです。
エヴァの原点が垣間見えますね。あと個人的には映画版ナウシカより漫画版の方がオススメです。
福岡市博物館の「ジブリの大博覧会」
ナウシカからマーニーまでのジブリ作品群の様々な企画書や資料、ビジュアルポスター等を見る事が出来ました まだ行ってない人も期間中に行ってみることをオススメします!




「天空の城ラピュタ」
宮崎監督のお得意のファンタジー冒険活劇! この作品の魅力の一つは地下から天空まで、物語中の幅広く立体的な空間を登場人物達が駆け巡るッ! それだけで観てる者は血湧き肉躍りますよねぇ。ただ、今でこそ人気の高い作品となっていますが、公開当時はSFアニメが流行していて、興行収入の面で苦戦したとか。ちなみに作中に出てくるムスカ大佐は、宮崎監督もとてもお気に入りだったようで、最初の絵コンテでは今以上に登場シーンが多く、プロデューサーの鈴木さんに注意され泣く泣くいくつかカットしたとか……
「となりのトトロ」「火垂るの墓」
なんで今回は二つ紹介なんだと言いますと、実はこの二作品は公開当時、「同時上映」されていたのです! 宮崎さんと高畑さんの夢の競演、驚きですよね。元々この二つは60分以内の中編作品を予定されていたのですが、まず火垂るの墓の方がクオリティを追求していくうちに88分に伸びました。それを聞いた宮崎監督が対抗心を燃やし、「じゃあトトロも上映時間を伸ばす」と言いだし、となりのトトロも88分に伸びました。元々となりのトトロのヒロインは女の子が一人だったのですが、上映時間を伸ばす方策として今の形である姉妹の物語に変更しました。
余談ですが、配給元である東宝側は『幽霊のような存在である「トトロ」と「墓」ではイメージが悪すぎる。ヒットするはずがない』と予想しており、確かに当時の興行収入はあまりふるいませんでした。